相続人がいない人の財産はどこへ？

身寄りのないAさんの遺産にまつわる事例から、
相続人がいない場合、財産の行方はどうなるのかを解説しましょう。
 
ある日、以前からお付き合いのある老人ホームの理事長さんから、「相談がある」とお声かけ頂きました。
早速理事長さんからお話を伺うと、最近お亡くなりになった入居者Aさんのことでした。
 
 
Aさんには身寄りがなく、Aさんの全財産である預金の通帳（数百万円）を預かっているとのことでした。
 
理事長さんのお悩みは、
 
　　・Aさんから預かっている預貯金の通帳をどうしたものか
　・Aさんには、本当にご家族（相続人にあたる方）はいらっしゃらないのか
ということでした。
 
そこで、まず戸籍から相続人を探すことを始めました。
 
 
結果、Aさんには配偶者も子もなく、両親も兄弟もすえに他界されていました。
よって、相続人に該当する方は1人もいらっしゃいません。
 
相続人がいない相続では、特別縁故者（※下記参照）が受け取る財産以外のすべてが、国に帰属されます。
 
Aさんのケースでも、特別縁故者にあたる方がいらっしゃらなかったので、
国に帰属するための手続きをすることになりました。
 
これらの手続きは、家庭裁判所での手続きとなり、複雑で時間もかかります。
もしAさんが遺言を残されていれば、
お世話になった方はご友人に財産を渡したり、寄付をしたり、
ということが可能でした。
 
このような場合でも、遺言が大切な役割を果たすのだろうと実感した事例です。
 
 
 
※特別縁故者･･･
故人に相続人がいない、遺言書がないケースで、故人と特別な縁故を理由に遺産を分与される者のこと。
特別縁故者に該当するかしないかは、家庭裁判所の審理による審判となります。