事例でわかる相続の知識
-
2020/01/10
養子縁組で増税になることも
70歳で亡くなったAさんの遺産にかかる相続税に関する事例です。
Aさんには妻子がなく、相続人は兄弟姉妹など7名、相続税の基礎控除額は7,200万円のはずでした。
「はずでした」というのも、実際は基礎控除額が3,600万円となり、想像以上に相続税を支払うことになったのです。なぜ相続税の基礎控除額が半分になり、相続税が多額になったのでしょうか。
Aさんは独り身でしたが、身の周りのことや財産の管理をご自身でされるほどしっかりされていました。兄弟姉妹などに世話になることはほとんどありませんでしたが、姪であるB子さんが時々Aさんの家に来ては、「おじさん、元気?」と様子を見てくれていました。B子さんがお茶を入れてくれ、世間話をして気遣ってくれることが嬉しく、Aさんにとっては何よりの楽しみでした。
穏やかな人生を歩んでいたAさんですが、ある時、ガンと診断され、余命宣告を受けました。
Aさんは自分の財産を姪のB子さんに譲りたいと考えました。そこでAさんはB子さんに、養子になって欲しいとお願いしました。
B子さんも、自分のできる範囲でAさんの世話や亡くなった際の葬儀、お墓の世話、供養などをするつもりだったので、養子の件を了承しました。この養子縁組によって、Aさんの相続人は姪B子さんのみになります。B子さんは財産の全てを受け取ることができますが、相続税の申告義務も負うことになります。
相続税の基礎控除額は、相続人が1人なので3,600万円となります。養子縁組をしたことによって基礎控除の額が小さくなり、財産額にかかる相続税が大きくなってしまいました。この場合、AさんがB子さんをいくら自分の娘のように思っていたとしても、「養子縁組」ではなく、「公正証書遺言」を利用して財産を残した方が得策でした。
公正証書遺言であれば、相続人の範囲は当初の兄弟姉妹7名から変わりません。基礎控除額も7,200万円のままです。
では、兄弟姉妹に遺留分を請求されるのではないでしょうか?
兄弟姉妹には遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)権はありませんので、財産の全てを、より少ない相続税の課税で、B子さんに譲ることができるのです。事前にAさんから相談を受けていればと、私ども専門家も非常に残念な思いでした。
事例でわかる相続の知識の一覧へ戻る
初回のご相談無料
相続のご相談・お問い合わせは
下記からお申込みください
-
お電話でのお問い合わせ 084-926-7494 受付時間 9:00~19:00
(土日祝も受付) -
メールでのお問い合わせ
お問い合わせフォーム