遺言が原因で争いに
遺言があったために、相続争いとなり、長期化した事例をご紹介します。
Aさんの家族は、妻Bさんと長女Cさん、二女Dさんです。娘は二人とも、結婚してそれぞれの家庭を築いています。長女Cさんは夫と娘、二女Dさんは夫と息子に恵まれました。
そんなある日、Aさんが亡くなり、相続が発生しました。相続人は、妻Bさんと長女Cさん、二女Dさんです。
財産は、預貯金と不動産。また、「遺言」と書かれた自筆証書遺言と思われる封筒を相続人全員が確認しています。
長女Cは、遺言について書籍を読み、妻Bさんと二女Dさんに言いました。
「自筆遺言は、家庭裁判所で検認という手続きを経ないと、開封してはいけないらしいよ。私が、検認の段取りをするから、この遺言は預かるね。」
妻Bさんも二女Dさんも、責任感の強い長女Cさんの言葉に安心して、納得しました。
しかし、長女Cさんは、友人からの一言で不安になります。
「遺言の内容は、まだ見ていないの?不安じゃない?もしCさんに損なことが書かれていたらどうする?」
長女Cさんは、この不安に耐えられず、検認前に遺言を開封してしまいました。そして、その内容に愕然としました。
内容は、Aさんの血を引く男子である二女Dさんの息子へ実家の家土地を含む不動産を継承させるものでした。
もう検認どころではありません。長女Cさんは、人が変わったように相続についての話し合いを拒むようになりました。
その後、数ヶ月間かけ、妻Bさんと次女Dさん、長女Cさんの家族からの説得もあり、ようやく相続について話し合いができるようになりました。
そして、相続人全員の同意で遺言とは違う遺産の分配方法で決着することとなりました。
妻Bさんや二女Dさんが、長女Cさんに対する思いやりを持って、話をされたので調停や裁判にはならなかったことが唯一の救いです。
遺言を作る時には、争いにならないような配慮もしくは、争いになった時の対策を考えて作成されることをお勧めします。
また、付言事項などで遺言者の思いを伝えれば、争いを防げるかもしれません。
相続手続支援センター 事例研究会